市民公開講座

1. これからの食のあり方

服部 幸應(学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長)

 生態系における生物間濃縮による農薬の危険性を指摘したレイチェル・カーソン著『沈黙の春』と複数の環境汚染が重なることで甚大な被害を及ぼすことを指摘した有吉佐和子著『複合汚染』は、私が食育について考える大きなきっかけとなっている。食育は健康に良いものを選ぶ力を養う「選食力」と食のマナーや食を分かち合うことの大切さを学ぶ「共食力」そして「地球の食を考える力」の三本柱から構成される。現在進行している第三次食育推進基本計画も15カテゴリ21項目に及んでいるがいずれも食育三本柱にふくまれている。ジェームス・ヘックマンによる「人的資本の収益率」にもとづけば食育の重要性は人間が誕生したときをピークに年齢とともに低減する。とりわけ授乳の重要性は人間である以前の哺乳類にとって共通とも言える。授乳をスタートに日々の食事の積み重ねが、ひとりひとりの人間形成と健康に関わり、同時にそれは地域やその国の食文化を形成し、ひいては食品ロスや食料自給率の問題、さらに国際社会・経済、そして昨今話題となっているマイクロプラスチックに代表されるような環境保全の問題にもつながる。このうち現代の日本人の健康という側面から考えると、砂糖がたっぷり入ったものをとりすぎないように注意し、塩分を抑え、野菜をたっぷり食べることが重要である。それも日本人の体質を踏まえると米を中心とした和食をベースに、西洋の食文化がほど良く取り込まれたバランスが理想的といえる。ふりかえると1965年から1985年までの日本人の「和洋食」的な食生活が該当する。他方で高齢化における食育的課題としてフレイルに留意したい。社会的・認知的・身体的に虚弱になることをフレイルというが、注意すべききっかけは口腔機能の虚弱(オーラル・フレイル)だ。口腔内環境が脳機能や肺炎、また心臓をはじめとした循環器系、さらには糖尿病、骨粗鬆症など全身にわたる疾患と関わりがあるとされている。そして加齢や疾患による筋肉量の減少で身体機能の低下が起こる。筋肉の喪失(サイコペニア)からの寝たきり、転倒、死亡のリスクを考えよう。私たち個々人の食の選択は、世界中の動きの影響を受けており、またその選択がさまざまなつながりを通して健康・家族・地域・経済、そして世界に影響を与えている。この相互のつながりの理解が「これからの食のあり方」において何よりも重要である。

2.病(やまい)はお口(くち)から

丹沢 秀樹(千葉大学大学院医学研究院口腔科学 教授)

【大会事務局】

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口腔科学講座
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実行委員長:鵜澤一弘
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